God is in the detail!その4

…but they will never be creative, because creativity means being willing to take a chance

People who would be creative must be able to endure loneliness ー even ridicule. If they have a great and original idea that others are not yet ready to accept, there will be long periods of loneliness.  

 前回その3でこの英文の下線部を訳しなさい、という問題を出しました。この問題は関西学院大学文学部で出題された入試問題です。そのとき、ポイントは”take a chance”の訳だと言いましたが、出来たでしょうか。

 TSKの授業ではほとんどの生徒の解答は「彼らは決して創造的になれない、なぜならば創造的であると言うことは敢えて”運をつかもうとする”からである」でした。確かに日本語の文脈で使われるときは、ポジティブな意味で用いられていることが多いように思います。例えば、運が向いてきたときなど、「チャンスが来た!」なんて言いますよね。英語でも辞書を引くと、chanceという言葉には「可能性、機会、偶然、運、勝算」とポジティブととれる意味がありますが、「危険、冒険」というネガティブにもとれる意味もあるのです。さてこの場合どちらの意味でとるのが正しいのでしょうか。

 実はさらに読み進めていくと筆者がどのような意味で使っているのかを説明している部分があります。次の段落です。「創造的であろうとする人は、孤独に、嘲笑にすら耐えることが出来なければならない。もし他人がまだ受け入れる準備が出来ていない、偉大で独創的な考えを持っていれば、孤独が長期間続くことになるだろう」と、さらにこの後も苦難が続く様子が語られていきます。つまりここでは、chanceはポジティブな意味ではなくネガティブなイメージで使われているわけです。そうすると、take a chanceは「運をつかむ」ではなく、「危険を冒す」という意味にとることが文脈上妥当だということになります。そして、この英文ではどんな危険が待ち構えているのか具体的にその後に述べているということになります。

 つまり、出題者の意図は、単に日本語でたまたま使っている意味を当てはめるのではなく、筆者がどんな意味でこの言葉を使っているのかを問題文の中から読み取ってもらいたいということなのです。文脈や文章の構造を分析しから読み取ってもらいたいと言うことなのです。同様の趣旨で他の大学でも出題されています。例えば、上智大学では次のような問題が出されています。

次の英文中の下線部の意味としてふさわしいものを選べ

There is a strong chance that we shall have exterminated ourselves by the end of the century.

 1.大いなる偶然   2.思いがけない幸運 

 3.強力な機会    4.大きな危険

 入試問題を解く場合、どんな簡単な言葉でも安易に考えるのではなく、文脈を正確にたどって、筆者がどんな意味を込めて使っているのかを考えながら読むこと、そのためには、段落の文の組み立てや文相互の関係そして段落相互の関係性など、単語や構文以外にも注意を払って読み取ることが肝心です。

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